退去立会いをしないのはアリ?後日トラブルが発生する理由とは

「退去立会いってしなくても大丈夫なのかな?」と不安に思っていませんか?退去立会いをしないことで、原状回復費用で高額な請求をされたり、敷金が返ってこなかったりするなど、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。この記事では、退去立会いとは何か、退去立会いをしない場合に起こりうるトラブル、そして、どうしても退去立会いができない場合の注意点や対策を解説します。退去立会いに関する基礎知識から具体的な対処法まで網羅的に理解することで、安心して引っ越しを進めることができます。この記事を読めば、退去立会いをするべきかどうかの判断材料と、スムーズな退去を実現するための具体的な方法が分かります。

退去立会いとは何か

退去立会いとは、賃貸物件を退去する際に、借主と管理会社(または大家)が立ち会い、部屋の状態を確認する手続きです。退去時に発生する原状回復費用や敷金の精算、鍵の返却などについて合意形成を図る重要な機会です。

退去立会いの意味と目的

退去立会いの主な目的は、退去時の部屋の状態を双方で確認し、トラブルを未然に防ぐことです。具体的には、以下の項目を確認・合意します。

  • 部屋の現状確認(汚れ、破損など)
  • 原状回復費用の負担割合の決定
  • 敷金の精算
  • 鍵の返却

退去立会いによって、退去後の思わぬトラブルや追加費用請求のリスクを軽減できます。また、敷金の返還をスムーズに進めるためにも重要な手続きです。

一般的な退去立会い手順

一般的な退去立会い手順は以下の通りです。

手順 内容
1. 入室と挨拶 管理会社(または大家)と借主が部屋に入り、挨拶を交わします。
2. 賃貸借契約書の確認 契約内容(特に原状回復に関する特約)を確認します。
3. 部屋の状態確認 壁、床、設備などに汚れや破損がないかを確認します。国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にすると、経年劣化と借主の故意・過失による損耗の判断基準が理解できます。
4. 原状回復費用の見積もり説明 管理会社(または大家)が原状回復費用を見積もり、借主に説明します。
5. 敷金精算の説明 原状回復費用を差し引いた敷金の返還額について説明があります。
6. 鍵の返却 部屋の鍵を返却します。
7. 確認書への署名捺印 確認事項に間違いがないかを確認し、署名捺印します。

これらの手順はあくまでも一般的なものであり、物件や管理会社によって異なる場合があります。事前に管理会社に確認しておきましょう。

退去立会いをしない場合に起こりうるトラブル

退去立会いをせずに鍵を返却してしまうと、様々なトラブルに巻き込まれる可能性があります。後で後悔しないためにも、退去立会いなしで発生しやすいトラブルについて理解しておきましょう。

原状回復費用に関するトラブル

退去立会いをしない場合、原状回復費用の負担をめぐってトラブルが発生する可能性が高くなります。退去立会いでは、部屋の状態を貸主と借主が一緒に確認し、修繕が必要な箇所とその費用負担について話し合います。立会いがない場合、この確認作業が行われないため、後々トラブルに発展しやすくなります。

高額な請求をされるケース

退去立会いが行われないと、貸主側が一方的に修繕箇所や費用を決定してしまう可能性があります。本来借主が負担する必要のない修繕費用まで請求されるケースも少なくありません。例えば、経年劣化による壁紙の張替え費用などを請求される場合があります。

修繕箇所の認識違いによるトラブル

退去立会いをしていれば、その場で修繕箇所について貸主と借主で認識を合わせることができます。しかし、立会いがない場合、貸主と借主の間で修繕箇所の認識に齟齬が生じ、トラブルに発展する可能性があります。例えば、入居時にすでにあった傷を退去時に指摘され、修繕費用を請求されるといったケースです。

敷金返還をめぐるトラブル

退去立会いは、敷金の返還にも大きく関わります。立会いがない場合、敷金の返還をめぐってトラブルが発生する可能性があります。

敷金が返ってこない

退去立会いがない場合、貸主は敷金を返還しない、あるいは必要以上に減額して返還する可能性があります。高額な原状回復費用を請求され、敷金が全額相殺されてしまうケースも考えられます。

敷金返還が遅れる

退去立会いがないと、部屋の状態確認や原状回復費用の精算に時間がかかり、敷金の返還が遅れる可能性があります。本来であれば退去後速やかに返還されるべき敷金が、いつまでも返ってこないという事態も起こりえます。

鍵の返却に関するトラブル

退去立会いをせずに鍵を返却した場合、鍵の返却時期や方法についてトラブルが発生する可能性があります。例えば、鍵の返却が適切に行われなかったとみなされ、追加費用を請求されるケースも考えられます。また、鍵を返却したにも関わらず、紛失したとみなされて弁償を求められるケースもあります。

その他予期せぬトラブル

退去立会いを行わないことで、上記以外にも予期せぬトラブルが発生する可能性があります。例えば、退去後の部屋で何か問題が発生した場合、責任の所在が不明確になり、トラブルに発展する可能性があります。また、後日、部屋の状態について貸主から連絡が来ても、すでに引っ越しをしている場合は対応が難しくなるでしょう。

トラブルの種類 内容
設備の故障 退去後に設備の故障が発覚した場合、立会いがあれば借主の責任ではないことを証明できますが、立会いがない場合は責任の所在が曖昧になり、修繕費用を請求される可能性があります。
盗難被害 退去後に部屋で盗難被害が発生した場合、立会いがあれば部屋の状態を証明できますが、立会いがない場合は被害状況を証明することが難しくなります。
近隣トラブル 退去後に近隣トラブルが発生し、その原因が以前の居住者に起因するとされた場合、立会いがあれば反論の材料になりますが、立会いがない場合は対応が難しくなります。

退去立会いをしないケース

退去立会いには原則として参加することが求められますが、どうしても参加できないケースもあります。正当な理由なく無断で欠席すると、後々トラブルに発展する可能性があるので、必ず管理会社または大家に連絡し、事情を説明しましょう。

正当な理由で退去立会いができない場合

病気やケガ、入院、出産、親族の介護、冠婚葬祭など、やむを得ない事情で退去立会いに参加できない場合は、管理会社または大家に連絡し、証明できる書類(診断書、入院証明書など)を提出することで、退去立会いを延期または免除してもらえる可能性があります。ただし、必ず事前に連絡し、相談することが重要です。

遠方への引っ越しなどで退去立会いが難しい場合

遠方への引っ越しなどで物理的に退去立会いに参加することが難しい場合も、管理会社または大家に相談しましょう。代理人を立てて退去立会いをしてもらう、郵送で鍵を返却する、後日改めて立ち会うなどの代替案を提示してくれる場合があります。

また、近年では、オンラインでの退去立会いを実施している不動産会社も増えています。ビデオ通話などを利用して、遠隔地からでも部屋の状態を確認してもらうことができるため、検討してみましょう。ただし、オンラインでの立会いが可能な場合でも、事前に管理会社または大家に確認し、必要な手続きや準備について相談することが大切です。例えば、国土交通省のガイドライン「賃貸住宅における原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」( 国土交通省:賃貸住宅における原状回復をめぐるトラブルとガイドライン ) では、原状回復に関するトラブルを防ぐための方法が詳しく解説されています。

ケース 対応 注意点
病気・ケガ 診断書等の提出、延期の相談 必ず事前に連絡
出産 母子手帳等の提出、延期の相談 必ず事前に連絡
遠方への引っ越し 代理人、郵送、オンライン立会いの相談 代替案の提示

退去立会いをしない場合の注意点と対策

退去立会いをどうしても行えない事情がある場合でも、後々のトラブルを避けるために、いくつかの注意点と対策を講じることが重要です。事前の準備と管理会社との適切なコミュニケーションを図ることで、スムーズな退去を実現しましょう。

賃貸借契約書を確認する

まずは、賃貸借契約書の内容を改めて確認しましょう。退去立会いに関する規定や、退去時の手続きについて記載されているはずです。契約内容を理解することで、自身が行うべき手続きや必要な準備を把握できます。契約書に不明点があれば、事前に管理会社に問い合わせて確認しておきましょう。

事前に管理会社と連絡を取り、状況を説明する

退去立会いに参加できない場合は、必ず事前に管理会社に連絡し、その理由と状況を説明しましょう。 正当な理由なく一方的に退去立会いを欠席すると、管理会社との信頼関係が損なわれ、後々のトラブルに発展する可能性があります。連絡の際には、退去日や鍵の返却方法についても相談しておきましょう。

書面でのやり取りを残す

口頭でのやり取りだけでは、言った言わないのトラブルに発展する可能性があります。管理会社との連絡内容は、メールなど書面で残しておくことが重要です。 後日、言った言わないのトラブルになった際に、証拠として役立ちます。また、重要な事項は書面で確認を取り合うことで、双方の認識の齟齬を防ぐことができます。

写真や動画で部屋の状態を記録する

退去立会いができない場合、退去前に部屋の状態を写真や動画で詳細に記録しておくことを強く推奨します。 特に、経年劣化による損耗や、入居時にすでに存在していた傷などは、証拠として残しておくことで、後々の原状回復費用に関するトラブルを回避できます。可能であれば、日付がわかるように撮影しておくとより効果的です。動画で撮影する場合は、部屋全体をくまなく撮影し、特に傷や汚れがある部分は近づいて撮影しましょう。

項目 注意点
写真撮影 全体像、細部、日付がわかるように撮影
動画撮影 部屋全体をくまなく、傷や汚れは近づいて撮影

これらの記録は、後日に管理会社との間で原状回復費用について協議する際に、客観的な証拠として役立ちます。また、退去時の状態を記録しておくことで、不当な請求をされた場合の対応もしやすくなります。 国土交通省のガイドライン「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 (原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)も参考に、適切な原状回復費用について理解を深めておきましょう。

退去立会いにスムーズに参加するためのコツ

退去立会いをスムーズに進めるためには、事前の準備と当日の対応が重要です。以下のコツを参考に、トラブルなく退去手続きを進めましょう。

出来るだけ部屋をキレイにしておく

部屋の状態が綺麗であれば、退去立会いもスムーズに進みます。事前に清掃を済ませておくことで、原状回復費用に関するトラブルを減らすことができます。特に、以下の箇所は重点的に清掃しましょう。

場所 清掃方法
キッチン ガスコンロや換気扇の油汚れを落とし、シンクを磨き、冷蔵庫の中も空にして清掃する。
浴室 カビや水垢を落とし、排水口の髪の毛やゴミを取り除く。
トイレ 便器や床を磨き、換気扇の埃を取り除く。
窓や網戸 窓ガラスや網戸の汚れを拭き取る。
掃除機をかけ、汚れがひどい場合は拭き掃除をする。

ただし、故意に破損した箇所を自分で修理しようとすると、かえって状況が悪化する場合があります。 そのような場合は、無理に修理せず、管理会社に相談しましょう。

必要な書類を準備する

退去立会いには、以下の書類が必要となる場合があります。事前に準備しておきましょう。

  • 賃貸借契約書
  • 印鑑
  • 振込口座の情報がわかるもの

これらの書類は、管理会社によって異なる場合があるので、事前に確認しておくことが重要です。不明な点は、事前に管理会社に問い合わせましょう。

疑問点は積極的に質問する

退去立会いでは、原状回復費用や敷金返還について説明を受けます。不明な点や疑問点があれば、その場で積極的に質問しましょう。 特に、原状回復費用の内訳や敷金から差し引かれる金額については、しっかりと確認することが大切です。後からトラブルにならないように、納得いくまで説明を求めましょう。

国土交通省のガイドラインでは、原状回復費用について詳しく解説されています。事前に確認しておくと、よりスムーズな退去立会いができるでしょう。これらのコツを参考に、退去立会いをスムーズに終え、新しい生活を気持ちよくスタートさせましょう。

退去立会いをしないのはアリ?まとめ

結論として、退去立会いをしないのは基本的にオススメしません。立会いによって、貸主と借主双方が部屋の状態を確認し、原状回復費用や敷金返還について合意を形成することができるからです。立会いを欠席すると、後々、高額な原状回復費用を請求されたり、敷金が返ってこなかったりするなどのトラブルに発展する可能性が高まります。

どうしても立会いできない場合は、賃貸借契約書の内容を確認し、管理会社に連絡して事情を説明しましょう。書面や写真、動画などで部屋の状態を記録しておくことも重要です。これらの対策を講じることで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな退去を実現できる可能性を高めることができます。ただし、必ずしもトラブルを回避できるわけではないことを理解しておく必要があります。